父ドナルド・キーンとも深いご縁のあったニューヨークのジャパンソサイエティ(Japan Society)で今、ベルリン在住の現代美術家・塩田千春さんの個展TWO HOME COUNTRIESが開催されています。
Chiharu Shiota: Two Home Countries — Japan Society
或る日ニューヨークのジャパンソサイエティの親しい友人から私に、塩田さんの個展に協力して欲しいとのメールがあり、その時初めて塩田さんの存在を知りました。
残念ながらまだ実際の塩田さんの作品に接したことはないのですが、ウェブサイトや塩田さんからいただいた図録を拝見し、糸を用いたインスタレーションは美しいインパクトで私を魅了しました。夢の世界に誘われるような気分さえします。
私はそれなりに現代美術に興味はあったのですが、塩田さんほどのかたをお名前さえ存じ上げたなかったことはちょっと恥ずかしく思いました。実際の作品を見なくとも作品の持つ主張と迫力が、図録などから伝わるほどです。
塩田さんはドナルド・キーンの著作を随分、そして深く読み込んでおられ、こう言って失礼でなければ父の影響をかなり受けておられると思いました。個展のタイトルTWO HOME COUNTRIESにも父の影響があると思われます。
Japan Societyを通じての私への要望は、大戦中においてアメリカ軍が戦死した日本兵から取得た日記や手帖はないかとのことでした。父はそのようなものはなく、幸い読売新聞の森太さんがワシントンDCの国立文書館で2005年にスキャンしたものをお持ちでしたので、森さんをご紹介しそのデータをお渡ししお使いいただくことになりました。
ニューヨークの個展では、沢山の赤い糸の中に、日本兵の日記がひらめいて不思議な、幻想的な美しい世界が展開しています。多くのことを考えさせられる作品です。
8月3日には塩田千春さんは我が家に来てくださり、森さんと私とそして塩田さんの秘書の佐藤さんの四人で歓談しました。