日々、ドナルド・キーンとともに

新刊『『ニューヨーク・タイムズ』のドナルド・キーン』(中央公論新社)について〈その1〉

2022.2.3 / 

ここからは数回に分けて、2月9日に発行される新刊書『『ニューヨーク・タイムズ』のドナルド・キーン』(中央公論新社)について私が思うところを書きたいと思います。

2月2日午後4時、中央公論新社のこの本の編集者が私の手元に本を届けに来て下さいました。私にとって、首を長くして待ち焦がれた出版でした。父の生前もそうでしたが、新刊が出るときは、父はそうでもありませんでしたが、私はいつもウキウキ、ドキドキしたものでした。

父の没後も毎年欠かさずドナルド・キーンの著書が出版されているることは大変意義があることだと思います。因みに昨年(2021年)は『日本を寿ぐ』(新潮選書)、一昨年(2021年)は『日本文学を読む・日本の面影』(新潮選書)、その前の年(2019)は『ドナルド・キーンのオペラへようこそ!―われらが人生の歓びー』(文藝春秋)と『黄犬交遊抄』(岩波書店)でした。今年は新刊書としてはこれだけだと思います。しかし文庫化される本は3冊予定されています。

『『ニューヨーク・タイムズ』のドナルド・キーン』は、父が1955年から1987年までにニューヨーク・タイムズに寄稿した書評やエッセイなど27本の記事で構成されています。翻訳は勿論角地幸男さんです。ドナルド・キーンの英語を、英語そのままに、分かり易く格調高い日本語に訳しておられます。そして訳者としてあとがきも書いてくださいました。この本の特徴や意義、内容を見事に評しています。あとがきにもある通り、父の33歳から65歳の働き盛りの壮年期、日本人に向けてではなくアメリカ人に向けて書いた文章ですから、日本人の知らないドナルド・キーンが顔を見せています。それがこの本の面白さだと言えそうです。

今回は写真で書影をご覧いただきたいと思います。カバー(表)は、父が家からコロンビア大学の正門に向かって歩いているところです。1990年後半と思われます。カバー(裏)はコロンビア大学のキャンパスで、1950年後半でしょうか。オビの文章もいいと思いました。